10000人に1人の男とは。

ブログはじめることにしまして。

といいますのも、話せば長いことながら、
WordPressに挑戦するのも三度目でして、
ようやく続けられそうな、書けるネタを見つけました。
今までは業務上知り得た面白おかしい業界裏話を書くわけにもいかず、
既に先人たちの跋扈するグルメや旅行について書ける腕もなく、
新サービスやガジェットをレビューするほど金も時間もなく、
やっとつかんだそのネタは…

1年ほど前から、酔ってもないのに酩酊しているようなフラツキが始まり、
手すりのない階段がおりづらく、平らなところも走れなくなりまして。
半年前からは杖を突き始め、専ら最近は、早口癖の語り口調も、
呂律が怪しくなる有様で…
病院も小さいクリニックから大きい大学病院まで、
かかる科目もバラバラなら言われることも千差万別、
血の巡りが悪いとか、転ばぬように気をつけてとか、数値に異常なしとか
言われても、それでこんなになるのかなあなんて思って転々としてたら、
とうとう診断されました。

痛風発作でも腰痛でも筋力低下でもなく、
コロナに罹った覚えもないので後遺症のはずもなく
多系統萎縮症、英語ではMultiple System Atrophy、略してMSAという
立派な名前のある病気でして、しかも、国の指定難病で、
治療法のない不治の病だそうです。
発症から平均5年で車いす生活となり8年で寝たきりという、
進行性の神経難病、脳神経内科の分野に属するとか。

病因は、遺伝でもなく持病の関連悪化でもなく、
全くの突発というほど奇々怪々、調べれば調べるほど始末の悪い病気らしく、
診断された日の晩は受け止めきれず悲観的にもなりましたが、鑑みるに
日本国内には12000人ほどの患者がおり、発病率は10万人に12人ほどゆえに、
0.01%程、つまり“10000人に1人”の割合で発症するとされ、
宝くじに喩えると2等1000万円当選くらいかと思ったら、
4等5万円ほどの確率だそうで、宝くじはそんなに当たらないものかと
そっちの方がガッカリで、原因も不明なら治療法もない、
進行を遅らせる対症療法しか対策の取りようがないという、
まあまあ珍しい病気なんだと実感するとともに、
有史以来死ななかった人は一人もいない人類、
いわば100%の死亡率の人生において、
神仏のご加護により、最期の審判の執行を猶予されて、
その準備をせよ、と言われたが如く、
できなくなるまえに、今ぞやっておくことが山ほどあることに
気づかされたのは、嗚呼寧ろ僥倖と開き直りました。

今のところ、杖をつくのと、夕方や週末にくたびれると
呂律が怪しくなってくるのと、酒が弱くなったくらいで、
歳をとったらそんなもんだろ、とお思いになられたらシメたもの、
本人も、これから何が起こるのか、知らぬが仏、何とかなるさ、と、
呑気なもんで、奇病になんざ罹ろうと思っても罹れるものでもない
千載一遇の役回り、むしろ好奇心がうずうずと、
新しいことに挑戦する意気込みの居直った心持になったところで、
ブログのネタになる、ハタとそう思い当たった次第であります。

そういったわけで、難病と診断されて居直って
「居直り.トーキョー」のドメインで、「居直りナンビョー」と号して
始めるこのブログは、“10000人に1人”しか罹らない進行性の神経難病、
多系統萎縮症を患い、50歳で杖をついて歩くことになった男の
「進行の記録」にしようと。

まだまだ「奇病の初心者」でございますが、
もし5年経ち、10年経っても、進行なく、奇跡的にも回復したらご喝采。
そんな奇跡の大安売りな「回復記」となるか、
気の滅入る深刻な「闘病記」となるか、
どうぞ今日から見守っていただき、
末永くご愛顧のほどよろしくお願い申し上げます。

令和三年二月二十六日