多系統萎縮症の進行に伴う部長職自主返上のご挨拶

一昨年の組織変更に伴う新部創設に伴い、新設部の部長の大任に預かりましたが、ここ一年ほどは、自席を離れて、社内でも他のフロアに居る皆様のご尊顔を拝することなく、ご無沙汰いたしていること申し訳なく存じております。去る昨冬には、4週間にわたる懲役のような厳しいリバビリ入院を経て、早い進行の病ゆえ、その進行をなんとか遅めるよう努めてまいりましたが、完全に進行を止めることはできないようで、毎金曜には自宅にて訪問リハビリを受けねばならず、なんとか週に4日、いまだに通勤させていただいておる次第で、面目もございません。最近では、すっかり脚が弱り、さらに低気圧に弱く、低温にも弱い身体になってしまいまして、せっかく内線でご連絡をいただきましても、テレワークにて不在にしていることも多くなってしまいまして申し訳ございません。また、杖一本を支えに通勤するのは難しくなり、両手で杖を使う、大谷翔平バリの「二刀流」でなければ外出もできぬようになってしまいました。まだ車いすに乗る必要もなく、外出する際にはどこへ行くにもカミさんが甲斐甲斐しくも連れ立ってくれる有様となり、当然ながら、外食すなわち食べ歩きにも一人では行けず、カミさんの拵えてくれるヘルシーな野菜料理ばかりで、痩せる思いで三食欠かさず食べております。
そんな痩せっぽちではこれ以上の働きは期待できないと自省しまして、この度、現職である部長の職を返上することといたしました。通勤だけでヘトヘトとなり、他の階へ皆様のご尊顔を拝しつつ、社内の真贋怪しい噂話集めに飛び回るのもシンドくなってしまいました。それと、呂律の回りもますます悪くなり、雑談はできるものの、大勢の人の前で報告や説明することに難儀するようになってきました。本来は今夏に来る人事異動まで役目を全うするつもりでしたが、期中の4月ではありますが、どなたか相応しい方に後を託すことといたしました。後をお継ぎになる方には、ご迷惑とご面倒をおかけし大変申し訳なく思っております。
今やすっかり無芸大食の体になってしまい、身に余る大任であった部長の官職を返上するのは、忸怩たる思いながら、徳川慶喜公以来の大英断と自負しておりましたが、長きにわたり君臨なさってた五輪組織委の元会長でさえ官職返上を申し出たのも記憶にあたらしいところ、しかも舌禍故にあまり褒められたことではございませんが、私の場合、会社を馘首にならないだけでもありがたく、また跡目を継がれる方が快く引き継いでくださることに大変感謝しております。
無理言って部長職を返上した暁には、会社のために何の役に立つだろうかと思案しておりますが、これが難しいところでして、なんせ先例がございません。動きが鈍くなり呂律が回らなくても、6人に1人がかかるという認知症になったわけでも、ブルース・ウィリスのように失語症で引退するわけでもなく、頭はシャッキリしておりますし、社内で何人か先人たちが罹っているパーキンソン病でも1000人に1人の発病率だそうですが、私の患っている多系統萎縮症の方はというと10000人に1人の発病率と、先人たちよりレアキャラだそうで先例もない中、ゆきりんことAKB48の柏木由紀ちゃんが100000人に1人の難病にかかったそうで、上には上がいる、とさらなる格の違いをマザマザと思い知らされてしまいました。そんな格上の難病持ちの方が芸能界で頑張っていこうというのに、要支援2で障害者2級になったばかりのヒヨッコでも、まだ何か役に立てることがあるに違いないと、日々奮励してまいります。
先だって、昔のテレビ番組を録画した古いテープが出てまいりまして、MP4データに変換したものを見てみましたところ、昨今のコンプライアンス厳しい現代社会では考えられぬようなTBS「うたばん」にて、半裸で蹴られる金髪の素人男を見て、あんなふうに頑張らないといかん、と褌を締め直した次第です。
部長職を返上しながらも、部員として今までの部に居座らせていただけるという新しい環境ゆえに、役に立てることが見つかるまでは、ただ今まで同様に5階の自席に生き恥をさらしながら座って禄を食む日々ですが、近い将来には、かつてのように獅子奮迅の働きを見せる所存ですので、どうかお見捨てにならないよう、謹んでお願い申し上げます。とりいそぎ部長退任のご挨拶と変えさせていただくとともに、今後とも新体制となりました当部にご贔屓たまわりますよう、よろしくお願いいたします。

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